フランス大統領選、第1回投票

フランス大統領選の第1回投票日。
早朝、スターバックスに行って、ネットで、ニコラ・サルコジ大統領(民衆運動連合=UMP)とフランソワ・オランド候補(社会党)のフェイスブックページやツイッターをみると、ウォールに何もない。ツイートも2日前から止まっている。
ニュースチャンネルBFMTVをみても、各候補者の映像は全くなし。ただ、各候補がどこで投票するかというフランスの地図に顔写真が出るだけ。
1977年の法律で、午前8時から午後8時までの投票中に、出口調査の結果を報じた報道機関は、75,000ユーロの罰金を払うそうだ。この関係で、フェイスブックも始め、投票に影響しそうなものは一切ない。
ホテルのあるカルティエラタンから少し街を歩く。
一番トレンディな街というLe Maraisの投票所を目指すと、会場となっている小学校の前で、やっと候補者のポスターを見た。
投票所で、取材ができるか頼んでみる。入り口にいた人に「英語は話しますか」と聞くと、「う〜ん」。連れて行かれた投票所の背広を着た責任者にいたっては、眉間にしわを寄せて「英語など冗談を言ってはいけない」という感じで、フランス語にしたら、スムーズに取材が許可された。
オスロの入国管理局で、女性のオフィサーが言っていたのを思い出した。
「パリに行くの。パリはいいわね〜 英語をしゃべらないフランス人以外は完璧よ」
英語がどこでも通じるのを期待してはいけないが、でも今回はフランス語が話せてよかったと思った。

投票所の感じは、日米とも同じような感じだ。有権者は久しぶりの投票で、何だかおどおどしていて、待たなくていいところで足を止めたり、様子をうかがってしまう。
身分を証明するパスポート、半券を手渡し、名簿係がフルネームを大声で読み上げて、責任者がその名前をパスポートで確認。投票箱の投票用紙の差し込み口の蓋を開けて、投票し、すぐに閉じて、「A Vote!」(投票しました!)と大きな声で宣言する。そのあと、名簿にサインして終わり。
パリの中心はやはり圧倒的に白人が多く、1時間半ぐらいの間に、非白人有権者は二人しかみなかった。
続いて、空港からパリ市への電車に乗っているとき、目をつけていた郊外の駅に向かう。移民が多くて、「郊外」はパリジャンとの格差が大きいと聞いたからだ。電車に乗ったとたんに、マジョリティは非白人だ。白人は、空港に行く観光客ぐらい。
目当ての駅で黒人、イスラム教徒ばかりの乗客と降りると、いきなり「ニーハオ」と中国人女性に声をかけられた。何となく話をきいてみると、地方から出て来る親類を待っているようだった。米国みたいに、違法入国して地方の中華料理店を転々とする仕組みがここにもあるのだろう。顔も知らない親類を待っているのだ。
駅を降りて、iPhoneがちょっと使えないため、市役所か小学校を探す。ハラールイスラム教の調理)の肉屋に入って、「投票所は知りませんか」と聞くと、レジにいたおばあさんがカメラを見て「ジャーナリスト?」と聞いてくれた。「ここをまっすぐ行って、交差点を右。それで左側に投票所。分かった?」
肉屋を出てすぐに、通行人とは異なり、目が覚めるような白人で背が高い警官が4人もいたので、一応同じ質問をする。
「カメラはしまった方がいいよ。この辺では盗まれるからね」「首にかけていてもだめですか」「盗られるときに、転んじゃうからね〜」
歩いて数分で、投票所の市役所に到着。同じく、英語はだめという市役所の部長さんにあいさつ。彼をはじめとして投票管理人は、有権者と異なり、みな白人。彼は背広姿だが、女性はみなスーツを着て、すごいピンヒールをはいている。やはり特別な日なのだ。
1時間ぐらい取材。
ホテルに戻ってテレビをチェック。各チャンネルは、午後8時に一斉に出口調査の結果を、番組のタイトルを出す時間も惜しんでばーんと速報。ツイッターをみると、ロンドンの報道機関が出口調査の結果を8時よりも前に報道したらしく、AFPもそれに追随。「75,000ユーロだ!」というつぶやきに混じって、意外にも「法律を破るAFPの決断は支持できない」というのもあった。
出口調査の結果は、BFMTVで、オランド候補が29%、サルコジ氏が26%。過半数を超えないため、5月6日の決戦投票に突入だ。通信社によると、サルコジ氏が負ければ、再選を目指して負けた最初の大統領になる。