八海山と懐石料理

「ライバルはシャンパンとかビールなんです。100回でも、こういうのを開きます!」と八海山ロサンゼルス駐在の黒澤久美子さん。彼女と、「バレンタイン懐石ディナー」を企画した酒ソムリエの新川智慈子さんの元気ぶりには頭が下がる。
バレンタインデーを前に、NYの老舗ホテル、キタノにある「白梅」レストランで、懐石と八海山を楽しむイベントが、週末の2日間に渡って開かれた。

(智慈子さん、左、と久美子さん、写真Morgan Freeman)
東京にいてもなかなかいただけない、あるいは接することがない懐石に、数種類の八海山をふんだんにふるまい、しかも、的確な語彙でお酒やお料理の説明がさりげなく入る。久美子さんと智慈子さんは、大島紬などの着物姿。
バレンタインにちなんで、Kissにひっかけてキスの梅香揚げ。天国に一番近いといわれるニューカレドニアから来たエンジェル・シュリンプの海老次郎煮と、くすっとするような演出もあり、また、目でも楽しめる美しい盛りつけ。

正直言って、私にとってはニューヨークに来てから、一番満足の行く、しかも印象に残るお食事の一つだった。なぜだろうか。やはり、お料理の工夫に込められた、あるいは久美子さん、智慈子さんのもてなしの姿勢だったのではないだろうか。
高いお料理をいただいても、ただ出されるだけでは、印象に残らない。
30人のお客は誰もが、キタノの小島恭之副総支配人や久美子さんたちにお礼を言って、去って行ったし、満足しきった笑顔も印象に残った。
当日午後に到着したという純米吟醸の生酒をきんきんに冷やした一杯は、飲んだ途端に、どこのテーブルからもため息や「うーん」とうなる声が漏れた。たったおちょこ一杯で、これだけインパクトのあるものを紹介できるのも、八海山の伝統につちかわれたものだろう。
しかし、久美子さんはこういうイベントをあと100回やって、ビールやワインを凌駕したいのだと言う。社長さんも100回やれ、とおっしゃっているという。久美子さんはつい最近、ラスベガスのコスモポリタン・ホテルの客室ミニバーに八海山を入れるのにも成功した。すごいがんばりだ。
願わくば、日本の酒造業界がみなで団結して、日本酒を真に知ってもらえる日を一日でも早く達成できたら、と思う。