タイムズスクエアで思ったこと

「県域免許って、だめじゃない! そんなものがあっては、革命どころか変革も起きない」
零下5度のタイムズスクエアに立っていて、突然気がついてしまった。
ムバラク大統領が会見し、退任を表明するかもしれないというCNNの報道をみながら、ニューヨーク・タイムズ本社ビルに向かう。今週開かれているSocial Media Weekのイベント「リアルタイム報道とは何か」に参加するため。
午後2時から始まり、3時にはムバラクが会見と報道されていたため、正面のスクリーンにはエジプト関連のTwitterが、刻々と映されている。
パネリストの一人、NBCテレビのアン・カーリーさんの発言。
ソーシャルメディアが何か、というと、発言することができなかった人たちが、発言を聞いてもらえるということ。弱い立場の人たちが、存在する場所ができるということ」
「水がどんなに小さな穴も見つけて流れて行くように、人々が知りたいと思っていることは必ず、どこからか穴を見つけて、知りたいと思う人のところに伝わっていく」
言論の自由がなかったエジプトやチュニジアの人々が、ソーシャル・メディアにどっと流れた理由が分かりやすく説明された。
もちろん、チュニジア焼身自殺した人のビデオがYouTubeにあったわけではない。でも、彼の友人や追悼の人々が、少しずつ集まって、その中にほんの少しだけソーシャル・メディアを使っている人がいて、また少しずつ、チュニジア国内、そして世界に、「なぜ焼身自殺しなくてはならなかったのか」ということが伝わり、いつかはデモになって、大統領を退任、亡命に追い込んだ。

イベントの後、エジプトのムバラク大統領が退任すれば、必ずタイムズスクエアで、誰かが思いを語ってくれるだろうと思い、タイムズスクエアへ。アルジャジーラテレビをiPhoneで見て会見を待ちながら、突然思ってしまった。
日本は民主主義社会だけれども、ラジオやテレビの免許を各都道府県ごとに許可する県域免許があって、しかも放送内容をインターネットに流さないのでは、地方の人々の声というのは、県域内にとどまってしまう。もちろん、個人がブログなどで情報を発信できるが、きちんと取材ができて、信頼できる情報を流せるテレビ、ラジオ局によるコンテンツは、ニューヨークにはおろか、日本国内にさえ、伝わらないということになる。
エジプトで起きていることを、ニューヨークにいて、中東のニューステレビ局の放送をインターネットでチェックしながら、日本のことが深刻に心配になった。

もう一つの心配。イベント会場には、タイムズ、APなど大手メディアのソーシャル・メディア・エディターが続々と来ていた。日本のメディアのソーシャルへの遅れ。たとえ、取り組んでいたとしても、リンク先に原稿が全文載っていなかったりするわけだから、これも深刻だ。