ニーナの白鳥

2009年6月27日(土)

舞姫ニーナ・アナニアシヴィリ白鳥の湖アメリカン・バレエ・シアター(ABT)での最終公演で、ダフ屋もたくさん出て、ファンがバラの花を手にシアターに集まってくる。ちょっと異様な雰囲気だ。

今日は初めての試みだが、双眼鏡を持っていって、顔の表情を注意して見た。表情も演技のひとつだからだ。
3幕の黒鳥は、その挑発的な表情にびっくりした。王子が愛を誓うまで、「誓ってくれないと、だめ」「もっとちゃんと表明してくれないと」と、じらし、王子を騙すことをゲームのように楽しむオディールを演じた。

それに呼応するかのような踊りと演技をみせたロットバルト役でブラジル出身のマルセロ・ゴメスは、ニューヨーク・タイムズがほめちぎっていた。
オディールだけでなく、ロットバルトも、各国の王女と奔放に踊り、魅惑し、みなを騙すのを、やはりゲームのように楽しんでいる新たな解釈の「役作り」に、ブラボーが沸き起こった。
3幕の最後は、ロットバルトがオディールを高くリフトして投げると、一回転した後に王子が受け止めるという、この夜限りの「大技」が出て、音楽が終わる前に、うわーっと歓声が上がり、観客が立ち上がった。ニーナはその一瞬の間に宙で一回転していた。本当に回転力のある人だ。

カーテンコールには、ABTのプリンシパルが一人ずつ出てきて、花束を渡し、バラの花が舞台にうずたかく積まれた。

今日は同じボックス席に楽しい「連れ」が加わった。
ABTのスクールに通っている15歳のルイス・ゴンザレス君と、ABTの群舞からダンサーを発掘し、スポンサーになっているというキャシーだ。
ルイスは、ニーナを見るのは初めて。1幕が終わると、「あーーーっ」とため息のような声を上げた。
「ステップなんか見てないよ。ただただ、存在感に圧倒される。一回転するだけでも、胸がいっぱいになるほど感動する」
一方、キャシーは、どのソロも、誰よりも早く拍手を始める熱心さ。
「以前ほど回転速度は速くないのよ。でも、45歳になったら、その年齢の踊りがあるというもんじゃない?彼女ほど偉大であれば、振り付けを変えたって、誰も何も言わないわよ」
とはいうものの、ニーナは黒鳥の踊りまで、回転を抑えていたみたいだ。
黒鳥の32回転は、私にとっては「すごく速かった」。終わらないうちから、客席からうおーっという感動の声が沸いた。
http://www.youtube.com/watch?v=ky_bW3T60J0&feature=related(ニーナの32回転)

ニーナの踊りばかりでなく、その実績に惜しみない拍手を送り、感動をちゃんと表現するファンの姿に感動した。
あとは、ルイス君をいつか舞台でみてみたいものだ。