ビール缶の音が耳に鳴り響いたフランス大統領選投票日

日経ビジネスオンライン「ニュースを斬る」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20120507/231739/?ST=pc

ウォール・ストリート・ジャーナル「欧州最新ルポ」
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_439467?mod=Right_Column

5月6日(日)
夕方、福岡に住んでいたルイーザの紹介で、オードという女性友達の家に。セバスチャンというボーイフレンドと住んでいて、彼はジョージ・クルーニーにそっくりだった。二人とも映像アーティスト。
赤ワイン、完璧にといっていいほど美味しいチーズの盛り合わせとフランスパン。これだけで、フランス人て、何てもてなし上手と思ってしまう。
マックの大モニターに、テレビの画面を映して、投票結果を見守るが、すでにツイッターでは「オランド、勝利へ」の速報が、、、ということで、オランド支持のオードや友達はもう小躍りしている。
1981年に初代社会党大統領のミッテラン(名前がなつかしい。。。)が勝利した際、勝利演説をしたバスティーユ広場はもう人が殺到している。バスティーユは1789年、フランス革命が始まったバスティーユ牢獄のあったところで、今は広場。
午後8時に「報道管制」が解けて、オランド勝利が正式に報道されたら、バスティーユに行きたいけど、どうしようか、とオードに相談する。
「地下鉄ですぐだけど、地下鉄の駅を閉鎖しているかもしれないから、セバスチャンのスクーターの後ろに乗って、広場の近くまで行ったらどうか」
という。えー、この寒いのにスクーターに乗るのか、とちょっと躊躇。しかし、テレビで速報が出ると、セバスチャンは「オランドの演説を8時半からテレビで聞きたい」というので、パーティに別れを告げて地下鉄で行くことに。
で、これからやはりフランス人の予定はあてにならないことを学習していく。
歓声をあげる人たちに混じって地下鉄でバスティーユに到着。8時半からと言っていたオランドの演説を、広場にある大画面で待つが、結局9時半過ぎまで始まらなかった。
10時に日が完全に暮れて、写真も撮れなくなったため、地下鉄やスクーターで次々におしかける若者や家族連れにもみくちゃにされながら、広場を少し離れた。
何が印象に残ったか。
実は、歓声やオランドの演説の伴奏のように鳴り響いていた、ビール缶とワインのビンが地面を転がる音だ。
米国では、公共の場でお酒を飲めないので、決してこうした音は屋外で聞かれない。しかし、バスティーユでは若い人たちが赤ワインのビン(赤は社会党の色)やビールを持ち込みで持って来て、そこらに捨てるので、動き回る人たちが蹴飛ばして、石畳の上で、缶とビンの音が響くのだ。あー、何だか自由なフランスだ。

その後、あんまり寒いので、カフェに入って一休み。入った途端に、私のiPhoneを見て、おじさんが近づいて来て「iPhoneの充電器を持っているか」と聞いてきた。持っていたので、おじさんのiPhoneを充電してあげる。代わりに赤ワインをごちそうしてくれた。
「11時にオランドが、地元チュールからパリに飛んで来て、バスティーユで演説するよ」
「ほんとう?」
「弟が家でテレビを見ているから聞いてあげよう」
と私のiPhoneで弟に電話をしてくれる。本当に11時に来るらしい。そこで、赤ワイン一杯でねばったが、やっぱり11時半になっても来ない。寒いし、取材も終わったので、ホテルに戻り、テレビを見ながら原稿を書いていると、零時45分にやっとオランドがバスティーユに到着した。
ここの国では予定はおおよその予定だ。