5日目 食べることは自分たちのアイデンティティ

4月26日(木)

ローラがパリとフランス人に参っているという話を聞いたので、会った人に必ず聞くようにしている質問がある。
「パリやフランスのどこが一番いいですか」

日本からバックパックで旅に来て、フランスに住み着いたというT氏は、「まず、食べ物だ」と即答!
ハムにチーズ、そしてワイン。
あまりグルメではない私は「はー」と言っていたら、「フランス料理とイタリア料理のどちらが好き?」と聞かれた。
「フランス料理は東京でもニューヨークでも高くて食べに行かないし、イタリア料理店ならシェアしても怒られないので、行くにも料理するにもイタリア料理が圧倒的に多い。一生のうちでフランス料理店に行ったのは恐らく5回以内」
と事実を言ったのだが、ここで私は地雷を踏んでいた。
パリにはブラッスリーというのがあって、ハム一皿だけ食べても、シェアしても怒られない、美味しい食べる物がいくらでもある、というのは極めて重要だとT氏。

続いて、ローラの友達で、英語、フランス語完全なバイリンガルのMちゃん。
「重要なのは、フードと言語」
とこれも即答。
「ローラは、フランス語が話せるけど、十分な話し手ではなくて、誤解がいろいろあった。その上、彼女はアレルギーで乳製品が食べられない。パリでアンハッピーなのは、そのせいでしょ」
「一日の終わり、疲れて帰って来て美味しいワインとチーズがある。何にも代え難い。フードと言語が大切なのは、日本でもそうでしょう」
と言われた。
日本人は、単一民族国家なので、そこまで強烈に食文化と言語を擁護はしないだろう。擁護して議論をするべき、相手すら住んでいない。