ニーナ!

2009年6月14日

12日の夜は、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)で「ジゼル」を観た。
現代を代表するバレリーナニーナ・アナニアシヴィリ(46)が今シーズンで引退を発表し、この晩はABTで最後のジゼルだ。

(ABTより)
第1幕も、第2幕も、最後は涙が止まらなかった!
バレエを踊ったというよりは、ジゼルのスピリットを踊った、という感じだ。
技術はさることながら、とんでもない演技力の持ち主だ。
踊りが好きな天真爛漫な女の子、は本当に女の子にみえた、と思ったら、恋人に裏切られて、ものの数秒で半狂乱になり、息絶えるところは、ストーリーを知っているはずなのに、まるでその現場で初めて「事件」に遭遇したみたいに、劇場中が凍りついた。そして、精霊になってからは、本当に空気のようだった。

片足のトウで立ったまま、前方に20センチぐらいずつ跳ねて移動する(どうやっているのか分からない)ときや、ウィリー(精霊)になってから、体を弓のように反らせながら跳躍したときは、後ろのおじいさんが「オー」とうなった。
第2幕で、精霊になってから最初のソロで、隣のおばさんが涙をぬぐった。
あまりにジゼルになりきっていて、怖いくらいで、夜が明けて、お墓に戻るときに、お墓へのスロープに少しつまづいた。おそらく見えていなかったのだろう。
20年ほど前に、横浜でもジゼルを観た。最盛期は過ぎた、といわれるが、今回のほうがさらにいい。

最盛期はほんとうに過ぎたのだろうか。
4年前に白鳥の湖を観たときは、男性プリンシパルの手を借りずに一人でずっと回っているし、跳躍も高いし、片足トウのまま、10秒ぐらい立っていたし、超がつく技をどんどん披露し、その度に拍手が起こり、カーテンコールは10回以上あって、最後の最後まで、バラの花が舞台に降り注いだ。

今年5月の終わりに観たバランシンのMozartianaでは、幕があいたら、舞台中央に立っていたが、立っているだけでため息がでるほど美しく、これも拍手が沸いた。
ほかのダンサーよりもリズムのつかみが速いので、その分、踊っていると、一つ一つのポーズが時間的に長く思えて、彼女独特のふわっとした品のよさがただよう。
ニューヨーク・タイムズの記事。写真が美しい。記者は23年前にニーナを見たときと変わらない、と書いている。
http://www.nytimes.com/2009/06/10/arts/dance/10giselle.html?pagewanted=1&_r=1&ref=arts